ポップカルチャーリファレンスというのは流行の要素をさり気なく作品中に取り入れることで、流行作品を知っている読者の笑いを誘う手法である
-- キャプテン・オブビウス、ポップカルチャーリファレンスについて
変数に変数を代入すると、代入元の値が代入先にコピーされる。代入先の値を変更しても、コピーされた値が変わるだけで、代入元にはいっさい影響がない。
int main()
{
int a = 1 ;
int b = 2 ;
b = a ;
// b == 1
b = 3 ;
// a == 1
// b == 3
}
これは関数も同じだ。
void assign_3( int x )
{
x = 3 ;
}
int main()
{
int a = 1 ;
assign_3( a ) ;
// a == 1
}
しかし、ときには変数の値を直接書き換えたい場合がある。このときlvalue
リファレンス(reference)が使える。lvalue
リファレンスは変数に&
を付けて宣言する
int main()
{
int a = 1 ;
int & ref = a ;
ref = 3 ;
// a == 3
// refはaなので同じく3
}
この例で、変数ref
は変数a
への参照(リファレンス)なので、変数a
と同じように使える。
lvalue
リファレンスは必ず初期化しなければならない。
int main()
{
// エラー
int & ref ;
}
lvalue
リファレンスは関数でも使える。
void f( int & x )
{
x = 3 ;
}
int main()
{
int a = 1 ;
f( a ) ;
// a == 3
}
選択ソートで2つの変数の値を交換する必要があったことを覚えているだろうか。
int main()
{
std::vector<int> v = {3,2,1,4,5} ;
// 0番目と2番目の要素を交換したい
auto temp = v.at(0) ;
v.at(0) = v.at(2) ;
v.at(2) = temp ;
}
いちいち交換のために別の変数temp
を作って3回代入を書くのは面倒だ。これを関数にしてしまいたい。
// 値を交換
swap( v.at(0), v.at(2) ) ;
このような関数swap
は普通に書くことはできない。
// この実装は正しくない
auto swap = []( auto a, auto b )
{
auto temp = a ;
a = b ;
b = temp ;
} ;
この実装では、変数は単にコピーされるだけなので、関数の呼び出し元には何の影響もない。
これをlvalue
リファレンスに変えると、関数の呼び出し元の変数の値を交換する関数swap
が作れる。
// lvalueリファレンス
auto swap = []( auto & a, auto & b )
{
auto temp = a ;
a = b ;
b = temp ;
} ;
C++の標準ライブラリにはstd::swap
があるので、読者はわざわざこのような関数を自作する必要はない。
int main()
{
int a = 1 ;
int b = 2 ;
std::swap( a, b ) ;
// a == 2
// b == 1
}
ところで、この章では一貫してlvalue
リファレンスと書いているのに気が付いただろうか。lvalue
とは何なのか、lvalue
ではないリファレンスはあるのか。その疑問はあとの章で解決する。
値を変更したくない変数は、const
を付けることで変更を禁止できる。
int main()
{
int x = 0 ;
x = 1 ; // OK、変更できる
const int y = 0 ;
y = 0 ; // エラー、変更できない。
}
const
はちょっと文法が変わっていて混乱する。例えば、const int
でもint const
でも意味が同じだ。
int main()
{
// 意味は同じ
const int x = 0 ;
int const y = 0 ;
}
const
はlvalue
リファレンスと組み合わせることができる。
int main()
{
int x = 0 ;
int & ref = x ;
// OK
++ref ;
const int & const_ref = x ;
// エラー
++const_ref ;
}
const
は本当に文法が変わっていて混乱する。const int &
とint const &
は同じ意味だが、int & const
はエラーになる。
int main()
{
int a = 0 ;
// OK、意味は同じ
const int & b = a ;
int const & c = a ;
// エラー
int & const d = a ;
}
これはとても複雑なルールで決まっているので、こういうものだとあきらめて覚えるしかない。
const
が付いていない型のオブジェクトをconst
なlvalue
リファレンスで参照することができる。
int main()
{
// constの付いていない型のオブジェクト
int x = 0 ;
// OK
int & ref = x ;
// OK、constは付けてもよい
const int & cref = x ;
}
const
の付いている型のオブジェクトをconst
の付いていないlvalue
リファレンスで参照することはできない。
int main()
{
// constの付いている型のオブジェクト
const int x = 0 ;
// エラー、constがない
int & ref = x ;
// OK、constが付いている
const int & cref = x ;
}
const
の付いているlvalue
リファレンスは何の役に立つのかというと、関数の引数を取るときに役に立つ。
例えば以下のコードは非効率的だ。
void f( std::vector<int> v )
{
std::cout << v.at(1234) ;
}
int main()
{
// 10000個の要素を持つvector
std::vector<int> v(10000) ;
f( v ) ;
}
なぜかというと、関数の引数に渡すときに、変数v
はコピーされるからだ。
リファレンスを使うと不要なコピーをしなくて済む。
void f( std::vector<int> & v )
{
std::cout << v.at(1234) ;
}
しかし、リファレンスで受け取ると、うっかり変数を変更してしまった場合、その変更が関数の呼び出し元に反映されてしまう。
// 値を変更するかもしれない
void f( std::vector<int> & v ) ;
int main()
{
// 要素数10000のvector
std::vector<int> v(10000) ;
f(v) ;
// 値は変更されているかもしれない
}
このとき、const
なlvalue
リファレンスを使うと、引数に取った値を変更しないことを保証できる。
void f( std::vector<int> const & v ) ;